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黒船主導の取締役会は市民権得るかきょう総会のフジテック試金石 - ブルームバーグ

「投票は株主が持つ最も強力な武器だ」。この言葉を象徴するような変化が、エレベーター大手 フジテックの取締役会で起きつつある。1年前までは創業家出身の社長が率いるトップ主導型の企業だったが、今や独立社外取締役がコーポレートガバナンス(企業統治)を高める役員構成へと様変わりした。

  フジテックは21日に滋賀県内で定時株主総会を開く。会社側が提案した社内取締役候補は社長に就任予定の原田政佳氏らいずれも新任の3人で、社外取締役候補は再任5人と新任1人。一方、創業家出身で3月に会長を解任された内山高一氏は独自に社外取締役候補8人の選任を求める株主提案を提出、会社提案に異議を唱えた。

Key Speakers At The Sohn Conference

オアシスのセス・フィッシャー最高投資責任者

Photographer: Anthony Kwan/Bloomberg

  現社外取締役5人のうち4人は、2月の臨時総会で同社株主である香港のヘッジファンド、 オアシス・マネジメントの推薦を受けて選任されたばかり。株主総会招集通知によると、新任の社内外取締役候補4人については、独立社外取締役のみで構成される指名・報酬委員会が社内の幹部や外部専門家の意見を参考に、社内外問わず適任者を探して決めたという。

  会社提案による取締役候補について、フジテックに投資する カナメキャピタルで調査責任者を務める槙野尚氏は「第一印象として取締役会が適切に機能している」と評価した。総会の招集通知によると、原田氏は重点地域である中国などで営業経験が豊富で、残り2人の社内取締役候補は中途入社組。新社外取締役候補は海外の競合他社出身だ。同ファンドは会社提案全てに賛成票、株主提案には全て反対票を投じるという。

  フジテックのように時価総額が2000億円を超える大型株で、少数株主の提案を契機に取締役会の構成が大幅に入れ替わった例は珍しい。

  契機となったのは昨年6月の定時株主総会。オアシスは内山氏を含む創業家とフジテックとの間で「多数の疑わしい取引がある」と指摘し、内山氏の取締役再任に反対を表明。フジテックは総会の開催直前に内山氏の取締役再任案の撤回を発表し、代表権のない会長として残留させたことが投資家らの 反発を買った。

  オアシスが推薦した社外取締役のうち、海野薫氏が今年3月に取締役会議長に就任。新体制下で内山氏を会長から 解任した経緯がある。

フジテックの過去1年の株価動向

株価は5月に上場来高値を更新

出所:ブルームバーグ

  JPモルガン証券・M&A(合併・買収)グループ責任者の土居浩一郎氏は「アクティビストが社外取締役として推薦する人物は、良くも悪くも外国人や外資系企業出身者などグローバルな人材が多い。名誉を大事にしているので、筋を通すために辞任もいとわない」として大胆な改革を実践できる可能性があると指摘する。

  一方、内山氏は現在の取締役会が「特定の株主の言いなりになっており、ガバナンスに問題がある」と批判、総会では会社側提案の社外取締役候補6人の選任に反対票を投じるとした。

  オアシスのセス・フィッシャー最高投資責任者(CIO)は、フジテック取締役会は「すべての利害関係者に価値を届けることができると思っている」と反論するが、創業家とのしがらみを性急に断つような取締役会の動きには、一部の取引先から目先の利益を優先するファンドの介入で、事業の安定性が損なわれるのではと心配する声も上がる

独自の社外取締役提案は増える

  ただ、政府が企業統治改革で、独立社外取締役の数など形式の議論から脱し、次は取締役会の機能向上など実質を求めていくとする動きには合致する。金融庁の廣川斉・企業開示課長はブルームバーグの 取材で「社外取締役は期待されている役割をもっと発揮してほしい」と求めた。

  フジテック株主の英アセット・バリュー・インベスターズ( AVI)は、現取締役会はすべての株主の利益最大化のために働いていると評価し、今回の総会で会社側提案候補全員に賛成票を投じる。

  AVIの日本株調査責任者、ダニエル・リー氏は「投票は株主が持つ最も強力な武器だ。日本で株主の投票行動は変わってきている」と強調。その上で「株主が企業統治を改善するために、独自の社外取締役を立てる戦略は日本でもっと普及しそうだ」との見方を示した。

Seven & i Holdings Shareholders Annual Meeting

5月25日に開催された7&iHDの株主総会

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  実際、5月のセブン&アイ・ホールディングス( 7&iHD)の株主総会では、 否決されたものの、井阪隆一社長の退任などを求めた米 バリューアクト・キャピタル・マネジメントが独自に4人の社外取締役候補を提案した。AVIも今月29日に開催予定のインフラ設備メーカー、 NCホールディングスの定時総会で2人の社外取締役を求める株主提案を行っている。 

  カナメキャピタルの槙野氏は「業績で結果を残せなかった経営陣の責任を問うて交代を主導できるようになれば、実質がついてくるはずだ」と社外取締役の意義を指摘。フジテックについては「今後メリハリの利いた投資やリスクテイクを通じて、業績面でも成果が出てくることを期待している」と述べた。 

  大胆な改革を迫るアクティビストといういわば「黒船」が推す社外取締役が今後、日本企業でも増えていくのか。フジテックの企業統治や業績の行方が試金石にもなりそうだ。

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(第12段落に株主の投票行動を追加するなど加筆して更新します)

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