岸田首相「構造的な賃上げ強化」 10月に経済対策 - 日本経済新聞

第2次岸田再改造内閣が13日、発足した。岸田文雄首相は皇居で認証式を済ませた後に首相官邸で記者会見し、10月をめどに経済対策をとりまとめると表明した。「物価高に負けない構造的な賃上げと投資拡大の流れを強化する」と述べた。2023年度補正予算案を編成し、秋の臨時国会に提出する方針だ。

今回の内閣改造で閣僚19人のうち初入閣は11人となった。首相は新たな布陣を「変化を力にする内閣だ。経済、社会、外交・安全保障の3つを政策の柱として強固な実行力を持った閣僚を起用した」と説明した。

新体制下でまず取り組むのは経済対策だ。月内に対策の柱立てを閣僚に指示する。

インフレ下での持続的な賃上げや投資の拡大をはかるため、中小企業に適用する賃上げ促進税制の期限延長などを盛り込むとみられる。首相は「物価上昇率プラス数%の賃上げを継続的に実現するための政策や、官民連携により150兆円規模の投資を誘引する取り組みを進める」と語った。

物価高を踏まえた国民の生活支援策も柱となる。政府はすでにガソリンや電気、都市ガスの価格抑制策について9月末の期限延長を決めた。ガソリン補助金は段階的に拡充し10月中に全国平均で175円程度になるようにする。

対策を踏まえ23年度補正予算案の編成を指示すると明言した。ガソリン補助金などは22年度第2次補正予算などに計上した使い残しを利用する。

臨時国会の召集や衆院解散・総選挙の時期について、首相は具体的な言及を避けた。「思い切った経済対策をつくり、早急に実行していくことを最優先に日程を検討する」と述べるにとどめた。

行政のデジタル化を推進するとも強調した。「デジタルを力として地方経済の成長を図る。利用者目線を第一に据えて、国と地方の行財政を変えていく」と言明した。

地方自治体の業務を国が代行する「令和版デジタル行財政改革」に取り組む担当閣僚を新設し、河野太郎デジタル相が兼務する。デジタル行財政改革会議を新設するとも発表した。防衛費の増額などを賄う財源の捻出への期待もある。

首相は防衛費確保への増税時期に関し、行財政改革の行方や与党の議論を見極める意向を示した。防衛装備品の輸出ルール見直しについて「国際情勢の変化の中で適切に判断しなければならない」と話した。

児童手当の拡充などの少子化対策は、必要な法案を来年の通常国会に提出する方針だ。

世界平和統一家庭連合（旧統一教会）への対処を巡っては、過去7回にわたる質問権の行使に触れ「しっかりとした結論を出すべく最終の努力を進める」と訴えた。「宗教法人審議会の意見も聞きながら、法に基づいて最終的に判断する」と指摘した。

**第2次岸田再改造内閣（2023年9月13日認証式）**
総　理
	岸田文雄（66）きしだ・ふみお党政調会長、外相、党国対委員長（早大＝衆(10)広島1、岸田派）
総　務（初入閣）
	鈴木淳司（65）すずき・じゅんじ総務副大臣、経産副大臣、総務政務官（早大＝衆(6)愛知7、安倍派）
法　務（初入閣）
	小泉龍司（70）こいずみ・りゅうじ党国際局長、党副幹事長（東大＝衆(7)埼玉11、二階派）
外　務
	上川陽子（70）かみかわ・ようこ法相、少子化相（米ハーバード大院＝衆(7)静岡1、岸田派）
財務・金融（留任）
	鈴木俊一（70）すずき・しゅんいち党総務会長、五輪相、環境相（早大＝衆(10)岩手2、麻生派）
文部科学（初入閣）
	盛山正仁（69）もりやま・まさひと法務副大臣、法務政務官（神戸大院＝衆(5)比例近畿、岸田派）
厚生労働（初入閣）
	武見敬三（71）たけみ・けいぞう党参院政審会長、厚労副大臣（慶大院＝参(5)東京、麻生派）
農林水産（初入閣）
	宮下一郎（65）みやした・いちろう内閣府副大臣、財務副大臣（東大＝衆(6)長野5、安倍派）
経済産業（留任）
	西村康稔（60）にしむら・やすとし経財相、官房副長官、内閣府副大臣（東大＝衆(7)兵庫9、安倍派）
国土交通（留任）
	斉藤鉄夫（71）さいとう・てつお党幹事長、環境相、党政調会長（東工大院＝衆(10)広島3、公明）
環　境（初入閣）
	伊藤信太郎（70）いとう・しんたろう外務副大臣、外務政務官（米ハーバード大院＝衆(7)宮城4、麻生派）
防　衛（初入閣）
	木原稔（54）きはら・みのる首相補佐官、財務副大臣、防衛政務官（早大＝衆(5)熊本1、茂木派）
官房　拉致問題（留任）
	松野博一（61）まつの・ひろかず文科相、文科副大臣、厚労政務官（早大＝衆(8)千葉3、安倍派）
デジタル　行政改革　規制改革（留任）
	河野太郎（60）こうの・たろう規制改革相、外相（米ジョージタウン大＝衆(9)神奈川15、麻生派）
復　興（初入閣）
	土屋品子（71）つちや・しなこ厚労副大臣、環境副大臣（聖心女子大＝衆(8)埼玉13、無派閥）
国家公安　防災（初入閣）
	松村祥史（59）まつむら・よしふみ参院議運委員長、経産副大臣（専大＝参(4)熊本、茂木派）
こども政策（初入閣）
	加藤鮎子（44）かとう・あゆこ国交政務官、環境政務官（米コロンビア大院＝衆(3)山形3、谷垣G）
経済財政・再生
	新藤義孝（65）しんどう・よしたか総務相、経産副大臣、外務政務官（明大＝衆(8)埼玉2、茂木派）
経済安保　科学技術（留任）
	高市早苗（62）たかいち・さなえ党政調会長、総務相、少子化相（神戸大＝衆(9)奈良2、無派閥）
地方創生　沖縄・北方（初入閣）
	自見英子（47）じみ・はなこ内閣府政務官、厚労政務官（東海大＝参(2)比例、二階派）
＜表の見方＞氏名、年齢、略歴、カッコ内は出身校、当選回数、選挙区、党派（自民党議員は所属派閥・グループ）の順。敬称略（写真は共同）

閣僚の兼務・担当 財務相＝デフレ脱却▽経産相＝原子力経済被害、GX実行推進、産業競争力、ロシア経済分野協力、原子力損害賠償・廃炉等支援機構▽国交相＝水循環政策、国際園芸博覧会▽環境相＝原子力防災▽官房長官＝沖縄基地負担軽減▽デジタル相＝デジタル行財政改革、デジタル田園都市国家構想、行政改革、国家公務員制度▽復興相＝福島原発事故再生総括▽国家公安委員長＝国土強靱化、領土問題、海洋政策▽こども政策相＝少子化対策、若者活躍、男女共同参画、女性活躍、共生社会、孤独・孤立対策▽経財相＝新しい資本主義、スタートアップ、感染症危機管理、全世代型社会保障改革▽経済安保相＝クールジャパン戦略、知的財産戦略、宇宙政策▽地方創生相＝消費者及び食品安全、アイヌ施策、国際博覧会

官房副長官
・〈政務衆〉村井　英樹（43）
・〈政務参〉森屋　宏（66）
・〈事務〉栗生　俊一（64）

法制局長官
・近藤　正春（67）

**自民党の新体制** （2023年9月13日就任）
副総裁（再任）
	麻生太郎（82）あそう・たろう副総理、財務相、首相、党幹事長（学習院大＝衆(14)福岡8、麻生派）
幹事長（再任）
	茂木敏充（67）もてぎ・としみつ外相、党政調会長（米ハーバード大院=衆(10)栃木5、茂木派）
総務会長
	森山裕（78）もりやま・ひろし党選対委員長、農相（日新高＝衆(7)鹿児島4、参(1)、森山派）
政調会長（再任）
	萩生田光一（60）はぎうだ・こういち経産相、文科相、官房副長官（明大＝衆(6)東京24、安倍派）
選対委員長
	小渕優子（49）おぶち・ゆうこ経産相、財務副大臣、少子化相（早大院＝衆(8)群馬5、茂木派）
（注）敬称略。カッコ内は出身校、当選回数、選挙区、所属派閥の順。敬称略（写真は共同）